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プロローグ
私たちがこの地に家を建てて引っ越してきたのは4月。 寒冷地だったので、念願の薪ストーブを設置し、『これから薪集め、菜園やるぞ~』と意気込んでいました。
そして新しい家ではまた猫を飼いたいなあと漠然と思っていました。 以前に飼っていた猫が病気で亡くなってから6年。 最期を看取った時の記憶がとても辛かったので、ヨメさんは『また飼ってみたいような、もう飼いたくないような。。。』という複雑な気持ちだったようです。
が、薪ストーブの前で猫と過ごす、、、夢のようです。
猫を迎えるならペットショップからではなく保護猫を、手に乗るような仔猫を迎え、それが大きくなって『もち丸』のようなきれいな猫になっていくといいなあ、、と妄想を膨らませていました。
ただ、妄想のみで実際に譲渡会に行ったり、、ということはしていませんでした。
ねこたろうとの出会い
そんな5月のある日、窓の外を見ると黒っぽい影が動いているのを発見しました。なんと、草むらの中に猫が!!
この辺は寒いので野良猫はいないだろうと勝手に思っていました。冬はマイナス10℃くらいになるし、雪が積もることもあるので、ノラさんは外では生きていけないだろうと。。
その猫は草むらの中で狩りをしていたようです。 恐らくネズミ、カエルなどがいるのでしょう。草むらの中で身をかがめてなにかをうかがっています。
これが『ねこたろう』との最初の出会いです。
こんな寒い地域にもノラさんがいるのか、しかも逞しく狩りをしながら生きている。驚きとも感動とも言えない気持ちになりました。
後にうちの子になってもらうとは、この時点では思いもしていませんでした。逞しく狩りをして生きる成猫、、、 手乗り仔猫とは違い過ぎる。
でも近所にノラさんがいることがわかり、ヨメさんは大喜びでお近づきになる方法を思い巡らせます。 我が家にキャットフードはありませんでしたが、煮干しをあげてみたり。。。
その日を境に、時々その猫を見かけるようになりました。どうやらうちの周りを縄張りとしているようです。恐らく私たちが家を建てる前からこの辺りに住んでいたのでしょう。
最初は私たちに気づくとコースを変えて遠回りしたりしていましたが、煮干し効果か次第に私たちを恐れなくなりました。
気づけばうちの駐車場の車の下でくつろいでいることもありました。 まだ男の子か女の子かわからなかった時点で、私が勝手に『ねこたろう』と名付けてしまいました。
本人が聞いたら『そんな変な名前はイヤだ』と言うかも知れませんが。。。
いつしか私たちは窓から見える草むらや、駐車場にねこたろうが来ていないかワクワクしながら確認するようになっていました。
草むらで狩りをするのは早朝、駐車場でくつろぐのは午後が多いと感じました。
感動の再会
そんな中、、、一週間ほどねこたろうを見かけない期間がありました。
夫婦間で、『今日ねこたろう見た?』『見てない』という会話が続きます。 飼い猫でもないのに、『車に轢かれてないか』『狩りがうまくいかなくて弱ったのではないか』と心配になります。
そして、、久しぶりにねこたろうを見かけたときには、毛並みボロボロ、目も見えにくそう、、どこか具合悪いのではないかという様子でした。煮干しをあげても反応するものの食べようとしません。
煮干しに口をつけずにゆっくりと草むらに去って行った後姿を見て、、『もしやお別れを言いにきたのか?』と不安な気持ちになりました。
もやもやと悲しい気持ちを抱えたままさらに一週間、ねこたろうが姿を見せない期間が続き、『あ~、あれが最後の挨拶だったのか』と思い始めたある日、驚きの再会を果たします。
いつもねこたろうを見かけるのは玄関や駐車場、うちの付近の草むらなどで、建物と反対側の庭に入ってくることはありませんでした。(入ってきていたけれど、私たちが気づいていなかっただけかも知れません。)
悲しみのお別れ?から一週間ほど経ったある日、友人が釣った魚を送ってきてくれたので、庭でさばいていました。 アウトドア用テーブルを庭に出して立派な鯛をさばき、包丁、まな板、テーブルを洗っていたそのとき、なんと足元にねこたろうがいるではありませんか。。
『わっ、ねこたろう!!』思わず声がでました。 ねこたろうはその声には答えずくんくんと地面の匂いをかぎます。 『この辺にうまいもんがあったはずや』という感じで。
毛並みボロボロで食欲なく、トボトボ歩いて去って行った時から比べるとずいぶんと元気そうでした。
『悲しみの別れ』の後だったこと、庭側でねこたろうを見かけたのは初めてだったため、衝撃の再会でした。ねこたろうの元気そうな姿を見て私たちは大喜びしました。
さらに縮まる距離
このあと、またねこたろうは我が家を訪れるようになります。今度はもっぱら庭の方からうちを訪問してきます。
庭の方に頻繁に姿を見せるようになったとはいえ、まだ警戒感はあります。キャットフードを与えても私たちが近くにいると簡単には食べません。
我が家の庭にはタイルデッキがあり、その周辺に砂利、その外側に土という順ですが、ねこたろうは遊びに来てもいつも土の上で、なかなか砂利の上には来ません。ましてタイルデッキに乗るようなことは絶対にありませんでした。
お皿の上にキャットフードを置いてあまり近寄りすぎないように遠くから見守る、、という日々が続きましたが、ねこたろうは次第に『ここに来ればゴハンもらえる。こいつらは悪いヤツではなさそう』と認識していったようです。
いつしか土の上→砂利の上、、私たちが見ていても気にせず食べる、、という風に変わっていきました。 あ、この頃男の子であることが確認できました(^-^;
そして、庭にゴハンを食べにくるようになって約一か月、ねこたろうは意を決してタイルデッキに上がります。タイルデッキの上で食事をするようになったのですが、食べ終わった後もすぐにいなくならずに、しばらくデッキの上でくつろぐようになります。
とは言え、ねこたろうは気まぐれで来ない日もあります。来ない日はヨメさんは、『今日はどうしたんだろ』 『どこにいるんだろう』と窓の外を眺めます。 時々窓の外に向かって『ねこたろう!』と呼んでみたり。。。 怪しい家だと思われたかも知れません。。
うちに来ていないときはどこで何をしているのかはわかりませんが、私たちの生活にはなくてはならない存在となりました。
朝、夕、庭を確認してねこたろうの姿を探します。 私たちが起きるよりも前に、タイルデッキの上で待機していることも多くなりました。
ねこたろうへのおもてなし
驚いたことにやがてねこたろうは自分から私たちにスリスリしてくるようになりました。もしかしたら純粋なノラさんではなく、誰かに飼われていて捨てられたのかも知れません。撫でても嫌がりません。
過去の経緯はともかく、私たちはねこたろうが少しでも快適に過ごせて、我が家を気に入ってくれるよう工夫をします。
器にキャットフードと水を入れて与えていましたが、猫の食事は高さがあった方が食べやすいと聞いて、ねこたろうの食事用の台を作りました。
タイルデッキの上は硬くて寝心地が悪いのではと考えて、いつも寝そべるあたりに段ボールを敷いてみます。
暑い日中、快適に昼寝ができるようベンチにブルーシートをかけて日陰を作ります。
そのような努力?の甲斐あって、ねこたろうの滞在時間は少しずつ長くなっていきます。うちに来ないときの過ごし方はわかりませんが。。。